mc_rtc::Configuration
設定GUI機能では、コントローラーをリモートで操作するための動的なグラフィカルインターフェイスを構築することができます。この機能をコントローラーに実装して使用する方法は、ロギングの手法と似ています。
このページでは以下のトピックについて説明します。
GUIはサーバー/クライアントモデルで動作します。コントローラーがサーバーとなり、リモートインターフェイスがクライアントとなります。そのため、コントローラー側のコードでは、GUIサーバーからクライアントに送信されるデータのみが出力されます。このデータは、mc_rtc::gui::StateBuilder
インターフェイスを通じて追加されます。
GUIビルダーにアクセスするには、コントローラーのコードからgui()
を呼び出します。ロギングインターフェイスと同様に、GUIビルダーインターフェイスは常に有効になっているため、この機能を使用できるかどうかを気にする必要はありません。
GUIはカテゴリーごとに整理されているため、同じカテゴリーに複数の要素を追加すると、それらの要素はGUI上で一緒に表示されます。
カテゴリーは、文字列ベクトル(Pythonの場合は文字列リスト)で表されます。要素は、要素の型とアクセサー(コントローラーが提供するデータへのアクセサー)が記述されたシンプルなオブジェクトで表されます。
要素を追加するには、カテゴリーと1つ以上の要素を指定してgui()->addElement(...)
を呼び出します。例:
// a/bカテゴリに"Push"と名付けられたボタンを追加
gui()->addElement({"a", "b"},
mc_rtc::gui::Button("Push", []() { std::cout << "Hello!" << std::endl; })
);
// 複数の要素を一括で追加することも可能。この場合、追加された要素は追加された順番に表示される
gui()->addElement({"a", "b"},
mc_rtc::gui::Button("Button 1", []() { return; }),
mc_rtc::gui::Button("Button 2", []() { return; }),
mc_rtc::gui::Button("Button 3", []() { return; })
);
// 要素を追加する際に、追加された要素をタグするためにソースを追加することもできる
gui()->addElement(this, {"a", "b"},
mc_rtc::gui::Button("Button 1", []() { return; }),
mc_rtc::gui::Button("Button 2", []() { return; }),
mc_rtc::gui::Button("Button 3", []() { return; })
);
状態ビルダーには、よく使用する要素への参照用に、いくつかの「静的な」データが用意されています。デフォルトでは、以下のデータ参照エントリを使用できます。
robots
: コントローラー内で参照されるロボット名のリストsurfaces
: ロボットの名前と表面のマップbodies
: ロボットの名前とボディのマップデータにアクセスするには、gui()->data()
を呼び出して変更します。デフォルトのデータは、GUIクライアントでいくつかの要素をきれいに表示するのに使用されるため、それらのデータを変更しないことを強く推奨します。
このセクションでは、GUIに追加可能な各要素について説明します。ここで示す例はいずれも、gui()->addElement(...)
の呼び出しによってGUIに追加されることを想定しています。コントローラーとデータをやり取りする機能をGUIに追加する場合、形式を指定してデータをインポート・エクスポートする必要はありません。それらの処理はGUIによって行われます。
Label
/ArrayLabel
これらの要素は、シンプルなテキストや数値データを表示するのに使用します。
例
// 文字列ラベル
Label("LabelText", []() { return "some text"; });
// 値を表示
Label("Some value", [this]() { return this->value_; });
// 文字列のベクトルを表示
ArrayLabel("Some strings", []() { return {"a", "b", "c"}; });
// ベクトルをラベルをつけて表示
ArrayLabel("Vector", {"x", "y", "z"}, []() { return Eigen::Vector3d::Zero(); });
// いくつかの要素は関連付けられたラベルを持っている。例えばForceはArrayLabelも追加する。
Force("LeftFoot", [this]() { return this->robot().surfaceWrench("LFullSole"); }, [this]() { return this->robot().surfacePose("LFullSole"); }),
Force("RightFoot", [this]() { return this->robot().surfaceWrench("RFullSole"); }, [this]() { return this->robot().surfacePose("RFullSole"); }),
Force("LeftHand", [this]() { return this->robot().surfaceWrench("LeftFingers"); }, [this]() { return this->robot().surfacePose("LeftFingers"); }),
Force("RightHand", [this]() { return this->robot().surfaceWrench("RightFingers"); }, [this]() { return this->robot().surfacePose("RightFingers"); })
Pythonの場合、パラメーターリストの末尾にラベルを記述します。
ArrayLabel("Vector", lambda: self.v3d, ["x", "y", "z"])
Button
この要素は、単純にボタンを表示します。ボタンをクリックすると、指定したコールバック関数が呼び出されます。
Button("Push me", []() { std::cout << "Hello!" << std::endl; });
Checkbox
この要素はチェックボックスを表示します。表示される状態は指定した値により決まります。チェックボックスをクリックすると、値が反転します。
Checkbox("Check me", [this]() { return status_; }, [this]() { status_ = !status_; });
StringInput
/IntegerInput
/NumberInput
/ArrayInput
これらの要素は、データを入力する手段をユーザーに提供します。データに最も適した記述を使用してください。
StringInput("Your name", [this]() { return name_; }, [this](const std::string & n){ name_ = n; });
NumberInput("Weight", [this]() { return w_; }, [this](double w){ w_ = w; });
ArrayInput
では、データにラベルを追加するためのパラメーターも指定できます。また、配列サイズは固定されているとみなされます。
ArrayInput("Your array", {"x", "y", "z"},
[this]() { return v3_; },
[this](const Eigen::Vector3d & v) { v3_ = v; });
Pythonの場合、パラメーターリストの末尾にラベルを記述します。
ComboInput
/DataComboInput
これらの要素は、文字列のリストから値を選択するためのダイアログを作成します。ComboInput
では、ユーザーに選択させる文字列のリストを指定し、DataComboInput
では、GUI状態データマップのエントリへの参照を指定します。
ComboInput("Choose from list", {"a", "b", "c"},
[this]() { return choice_; },
[this](const std::string & c) { choice_ = c; });
DataComboInput("Choose a robot", {"robots"},
[this]() { return robot_; }
[this](const std::string & r) { robot_ = r; });
DataComboInput("Choose a surface", {"surfaces", robot().name()},
[this]() { return surface_; }
[this](const std::string & s) { surface_ = s; });
Point3D
/Rotation
/Transform
これらの要素は、以下の2つの項目を表示します。
ArrayInput
// 読み出し専用のものは値設定のためのコールバックを持ちません
Point3D("Point", [this]() { return v3_; });
// 読み出し・書き込み両用
// 注意:回転を表示したい場合でも変換全体を渡す必要があります。
// そうしないとGUIがどこに表示してよいのか判断できないためです。
Rotation("Rot",
[this]() { return sva::PTransformd{rot_, pos_} },
[this](const Eigen::Matrix3d & rot) { rot_ = rot; });
Trajectory
この要素は、3次元環境に移動経路を表示します。リアルタイムの移動経路として表示するか(表面がたどった経路の表示など)、あらかじめ計画された移動経路として表示するかは、返されるデータの種類に応じて決定してください。
// リアルタイム軌道は点を返す (型はEigen::Vector3d 又は sva::PTransformd)
Trajectory("RealTimeTrajectory",
[this]() { return robot().surfacePose("LeftGripper"); });
// 予め計画された軌道は点のベクトルを返す
Trajectory("Trajectory",
[this]() { return traj_; });
Polygon
この要素は、単一のポリゴン(1つの平面など)またはポリゴンのリスト(歩容計画など)を表示します。
// 単一のポリゴンはEigen::Vector3d型のベクトル
Polygon("Polygon"
[this]() -> std::vector<Eigen::Vector3d> { return {p0, p1, p2, p3}; });
// ポリゴンのリストはEigen::Vector3dのベクトルのベクトル
Polygon("Step plan",
[this]]() { return step_plan_display_; });
Force
この要素は、3次元環境に力ベクトルを表示します。力の値をsva::ForceVecd
として指定し、力を適用する対象となるフレームをsva::PTransformd
として指定する必要があります。
Force("LeftFoot", [this]() { return this->robot().surfaceWrench("LFullSole"); }, [this]() { return this->robot().surfacePose("LFullSole"); }),
Arrow
この要素は、3次元環境に矢印を表示します。矢印の始点と終点を指定する必要があります。編集可能な矢印を指定することもできます。
// 読み出し専用
Arrow("ArrowRO", [this]() { return start_; }, [this]() { return end_; });
// 編集可能な矢印
Arrow("Arrow",
[this](){ return start_; },
[this](const Eigen::Vector3d & start) { start_ = start; },
[this](){ return end_; },
[this](const Eigen::Vector3d & end) { end_ = end; });
XYTheta
この要素は、Transform
要素と同様ですが、X/Y軸方向の平行移動とZ軸周りの回転のみを編集できる点が異なります。
// X/Yの位置と回転角度を表す3つの要素からなるベクトルを返す
XYTheta("XYThetaOnGround", [this]() -> std::array<double, 3> { return {x, y, theta}; });
// 4つ目の要素で高さを指定可能
XYTheta("XYTheta", [this]() -> std::array<double, 4> { return {x, y, theta, z}; });
Table
この要素では、任意のデータが格納された表を3次元環境に表示できます。データのコールバック関数は、std::vector<std::vector<double>>
やstd::vector<std::tuple<X, Y, Z>>
のように配列の配列として表されたオブジェクトを返す必要があります。
// 固定されたヘッダを持つテーブル
Table("Simple table", {"X", "Y", "Z"}, [this]() -> const std::vector<Eigen::Vector3d> & { return points_; });
// 固定されたヘッダとフォーマットの情報を持つテーブル
Table("Simple with format", {"X", "Y", "Z"}, {"{:0.3f}", "{:0.3f}", "{:0.3f}"}, [this]() { return data_; });
// 動的なヘッダを持つテーブル
Table("Dynamic table", [this]() { return header_; }, [this]() { return data_; });
// 動的なヘッダとフォーマットの情報を持つテーブル
Table("Dynamic with format", [this]() { return header_; }, [this]() { return format_; }, [this]() { return data_; });
見出し、書式、データサイズの一貫性については、ユーザーが保証する必要がありますが、一貫性がなくても、ある程度まではクライアント側で正しく処理されます。書式指定文字列は、{書式}の規則に従って記述する必要があります。
Form
Form
要素を使用すると、より複雑な対話形式のダイアログを構築できます。フォーム自体は他の要素で構成されます。Form
は以下のように作成します。
Form("Push to send", // "send" ボタンの上に表示される文字列
[this](const mc_rtc::Configuration & data) {},
... // 要素のリスト
);
以下の要素を使用できます。
FormCheckbox(name, required, default)
FormIntegerInput(name, required, default)
FormNumberInput(name, required, default)
FormStringInput(name, required, default)
FormArrayInput(name, required, default, fixed_size (true))
FormComboInput(name, required, values)
FormDataComboInput(name, required, reference)
name
は、要素名の表示とコールバック関数によるデータの取得で使用されます。required
は、このフィールドが必須フィールドかどうかを表します。default
は、このフィールドのデフォルト値を表します(省略可)。
default
にデフォルト値を指定する代わりに、互換性のある型を返すコールバック関数を指定できます。
FormArrayInput
のfixed_size
は、指定されたデフォルト値のサイズが固定であるか、ユーザーがサイズを拡大・縮小できるかを表します。
FormComboInput
のvalues
は、コンボボックスに表示する値のリストを表します。
FormDataComboInput
のreference
は、データエントリへの参照を表します。また、$
記号を使ってフォーム内の他のフィールドを参照できます。例:
Form("Button name",
[this](const mc_rtc::Configuration & data) {},
FormDataComboInput("Robot", true, {"robots"}),
FormDataComboInput("Surface", true, {"surfaces", "$Robot"})
);
この例では、Robot
でユーザーが選択した項目に応じてSurface
コンボボックスの表示内容が変わります。
ユーザーの操作によって呼び出されたコールバック関数は、コントローラーの現在のループ処理が完了し、次のループ処理が開始される前に実行されます。並列処理についてユーザーが気にする必要はありません。
GUIから要素を削除するための2つの関数が用意されています。
// 単一の要素を名前で指定して削除
gui()->removeElement({"a", "b"}, "element");
// あるカテゴリ及びその全ての子カテゴリを削除
gui()->removeCategory({"a", "b"});
// 指定されたカテゴリ内でのみ、ソースポインタthisにより追加された全ての要素を削除する
gui()->removeElements({"a", "b"}, this);
// 指定されたカテゴリとその子カテゴリで、ソースポインタthisにより追加された全ての要素を削除する
gui()->removeElements({"a", "b"}, this, true);